ある程度の適性検査型学習が進むと、実践的な過去問を使うのは非常に有効です。
当HPにも多くの方からお問い合わせをいただく部分なので、ここで一挙に過去問演習のポイントを説明したいと思います。
特に以下のような方は必見ですよ!
・塾に通わせていないので親が採点しなければいけない
・複数の過去問を同時進行していて塾に頼み切れない
・塾に任せっきりではなく家でもサポートしてあげたい
「作文を採点する側に立つ」ということは
どんな作文が求められるかを知っていることを意味します。
適性検査においてどんな作文が求められているかわかれば
親子のコミュニケーションや直前期の生活にも
活かせることが多いはずです。
また、意外と大人も知らない「書きことばの常識」があったりします。
家庭内で何気なく使っている言葉のあり方が
子どもにとっていい影響を与えられるヒントになると思います。
作文添削の基本
大前提として知っていただきたいのは
作文は減点方式だということです。
一般的に作文の点数は適性検査Ⅰの6割を占めています。
わかりやすく、100点中60点分が作文で決まるとしましょう。
その60点は試験開始の時点ですでに手の中にあるのです。
そして一つまた一つとミスを重ねるごとに点数が引かれていくのです。
「感動的な文章だから+10点!」なんてことは起きません。
そんなことが許されたら、採点する先生によって点数がブレてしまうと思いませんか。
しかし、実際には多くの方が
「合格するにはいい作文が大切」と思われています。
間違っているとはいいませんが、正確ではありません。
「いい作文」の前段階として「減点のない作文」が評価されるからです。
したがって作文採点には減点方式の知識が必要です。
添削は大きく形式面と内容面にわかれますが
本記事では小学生の減点が最も多い形式面について説明します。
形式面の減点
形式面とは、「書き方」に関する観点です。
原稿用紙のルールにそって書き言葉が正しく扱えるかをチェックします。
「見ればわかる間違い」と言い直してもよいでしょう。
たとえば段落の最初は一マスあける、という有名なルールがありますよね。
あれも原稿用紙の書き方として決まっている形式面のお約束事です。
あるいは、漢字が間違っていたり脱字があったり・・
こういったものも全て形式面の減点にあたります。
すべて「見ればわかる間違い」ですよね。
このような形式面のミスは一か所につき2点の減点です。
(ただし、重複したミスは一回のみ減点)
見ればわかる凡ミスは2点ずつ引いていくということですね。
ただし、形式面の原点には少しやっかいな部分があります。
大人でも知らないような「書き方のルール」があるためです。
ここからは注意すべき形式面の減点対象についていくつかみていきます。
(できない子が多いところなので差が開くところですよ!)
①話し言葉の禁止
作文で「超」や「やばい」がだめなのは言うまでもありませんが、
「すごい」や「とっても」はどうでしょう?
作文は書き言葉なので友人同士で話すような口語体は減点。
とはいえ、どこからがアウトかは難しいですよね。
私がよく子どもに教えているのは
「ニュースを読むアナウンサーが口に出すかどうか」という観点です。
ニュースには読み上げるための原稿がしっかり用意されています。
この原稿が書き言葉で正しく書かれていますから
アナウンサーの口から出て我々の耳に届く言葉は99%正しい言葉遣いです。
では、もう一度考えてみてください。
NHKのニュースを読み上げるアナウンサーは
「すごい」や「とっても」を使うでしょうか。
このように考えてみると話し言葉は案外ちゃんとチェックできます。
そしてもちろん、こういった話し言葉も二点ずつの減点ですよ!
②略語の禁止
最近は小学生でもスマホを持っている子がいらっしゃいます。
それだけ身近な存在なので、彼らの作文にも頻繁にその言葉が出てきます。
しかし、だめですよね。
アナウンサー、言いませんよね。
そうです。「スマートフォン」です。
略語は一種の話し言葉ですから、形式的な書き方には向きません。
「スマホ買った」も「ディズニー行った」ももちろん減点です。
では、パソコンはどうでしょう。
リモコンは?エアコンは!?
確かに略語ではありますが・・
と悩む必要はありません。
先に紹介した通り、ニュースを想像すればいいのです。
「エアーコンディショナー」も
「リモートコントローラー」も
「パーソナルコンピュータ」も
聞いたこと、ありませんよね?(笑)
それなら、作文でも問題なく使えます。
一点注意が必要なのは、
略語が含まれた状態で熟語として成立している語です。
例えば、「歩きスマホ」。
この語は交通問題でたびたび取り上げられるため
ニュースなどでも聞いたことがあるのではないでしょうか。
昨今は入試問題でもテーマに扱われることがありますから
必然、作文の中にも登場する言葉です。
「歩きスマートフォン」・・・でしょうか。
いえ、安心して「歩きスマホ」と書きましょう。
ニュースで扱われているわけですから。
③「話」と「話し」
最後に少し毛色の違う注意をしておきましょう。
「正しい漢字の使い方」についてです。
送り仮名のない「話」と
送り仮名のある「話し」は
どのように使い分けるでしょうか。
大人でも意識して使ったことがないと
答えに窮するかもしれませんがざくっと言えば
話 = story
話し = talk
ですよね。
細かいところですが、相当数の子どもが使い分けられません。
当然採点する国語科の先生が見逃すミスではありません。
漢字にはこのようにかなり奥深い理解が求められるものがあります。
受検業界では形式名詞についての扱いをどうするかという
中々手強い題材がありますが我々は仕事なので追及します。
一方、多くの子どもにとって漢字とは天敵のような存在で
疑問に思ってもなあなあにし続ける子は多いのです。
塾の先生に頼んでも、多くの子どもの採点に追われて
一人あたりの作文添削に十分時間を割いていない
という場面も見たことがあります。
また、男子の宿命といえば雑字ですが
字にも正しさがありますから
字として正しくなければ一字につきしっかり二点減点されます。
「話」と「話し」は一例にすぎませんが、
子どもの自分で直しにくいミスはご家庭でもチェックできるとよいでしょう。
まとめ
今回は形式面に関して作文の採点方法を紹介しました。
内容に気を配る人が多い一方、形式は軽視されがちです。
しかし、上述した通り作文は100点中60点を占める適性検査の山場です。
都立中高一貫入試の合格ラインは8割くらいのところが多いですから、
作文でミスが許されるのは-16点まで。
つまり、形式面のミスは最大でも8か所までということになります。
誤字、脱字、雑字、話し言葉、原稿用紙の使い方・・
8か所未満というのはそれなりに訓練しないと到達できません。
ちなみに、内容面の減点はこれとは別なので
現実的には「形式面でのミスは0」が合格者の当たり前だと心得てください。
「ちょっとくらいのミスなら・・」
適性検査の作文で、その心構えは許されません。
採点する際は心を鬼にして、しっかり形式面のミスを改めていきましょう!